『宮崎日日新聞:8月23日(水)』にM砂事務長のメッセージが掲載されました。
高齢社会からのメッセージ
〜みやざき・研究会リレー便り〜
 高齢者福祉の現場として、最近はさまざまな形態の施設やサービスがある。その中で「介護老人保健施設(老健施設)」について説明したい。
 老健施設は介護保険施設で、「利用者の尊厳を守り、安全に配慮しながら、生活機能の維持・向上を目指し、総合的に援助する。また、家族や地域の人々・機関と協力し、安心して自立した在宅生活が続けられるように支援する」という理念のもと、県内に42施設、2990床が整備されている。
 かつて「中間施設」と呼ばれていたこともあり、医療と福祉の中間的なサービスを提供している。特にリハビリテーションを中心とした医療・介護を提供し、在宅復帰・支援を積極的に行っているのが特徴である。
 退所後も老健施設が整備している通所リハビリテーション(ディケア)や短期入所(ショートステイ)、訪問リハビリテーションの在宅サービスが利用でき、住み慣れた自宅での生活を継続できるよう援助している。
 入所対象者は、病状が安定し、治療や入院の必要はないが、リハビリを含む看護や介護などのケアが必要な方。介護保険の要介護度が要介護1から5の方である。
 入所期間に法的な定めはないが、永久的に入所するタイプの施設ではない。利用される方の心身の状況や家庭環境などによって利用期間は異なり、入所中に作成される「施設サービス計画書(ケアプラン)」に基づき、退所までの生活・ケアが決められる。
 では、県内で実際に入所してリハビリをし、環境整備をして自宅に帰った利用者の割合を見ると、介護保険導入前の1999年度は退所者のうち約40%だったのが、2005年度は約20%となった。残りは病院や特別養護老人ホームなどの施設に移った方が大半だ。
 自宅へ帰れなかった理由を1.本人側の理由2.家族側の理由3.環境の問題4.施設側が退所させなかった−という4つの項目で見ると、99年度は「介護する者が高齢者で介護能力がない」「自分の時間が大切」などの「家族側の問題」が約50%と一番多かった。
 それが05年度は「家族へ迷惑を掛けたくない」「自宅での生活に不安」などの「本人側の問題」で自宅に帰らない方の割合が増え、最も多くなっていた(県老人保健施設協会在宅支援研究部会アンケートより)。
 自宅復帰までの役割を持つのが老健施設なのだが、この結果により、年々、自宅復帰者が減少していることが分かった。さらに、利用者自身から「自宅には帰らない」との声が多く聞かれるようになった。
 しかし、本当に利用者が慣れ親しみ、家族がいる自宅ではなく、施設での生活を希望されているのだろうか。表面に出ているニーズではなく、より深い隠されたニーズを調べなければ分からないと思う。
 今後、利用者のニーズはますます多様化し、また、認知症の利用者の増加も見込まれる。その中で、利用者が本当はどこまでどのような生活をしたいかを見極め、そのニーズが達成されるような援助ができる施設づくりを進めていきたい。
<宮崎日日新聞:2006年8月23日(水) 掲載>