エコーリレーを担当するのは2回目になる。入職して13年が経ち、耕和会が人生で最も長く属する社会となった。日本の学校教育制度には詳しくないが、私の場合、小学校が6年制だったので入職7年目からそうなっていたのだが、振り返る機会がなかったので今書いてみた。生まれた家庭という社会の方が長いなとも思うが、序文なのでこの辺にしたい。
本来の備忘録の意味とは少し異なるかもしれないが、おそらく忘れてしまうであろう近況を記しておきたいと思う。忘れてしまっては困るという程のことではない。この13年の間に診療報酬と介護報酬の同時改定に2回遭遇した。エコーリレーと同じ頻度だが、因果関係はないかも知れないと、研ぎ澄まされた第六感が働く。平成18年の同時改定では入院患者・施設入所者の食費・居住費が保険適応外となった。保険事故にかかわらず食費や家賃は誰にでも発生するので、保険適応は適当でないとの見解からだったように記憶している。当施設では約100名の利用者と契約を結びなおす業務に追われた。介護保険は医療保険に先立ち改定が半年前倒しで施行されたため、本当に時間がなかった。仕事を終えて契約に来てくださるご家族を待って、毎晩遅くまで事務所に詰めた。前述のように食費は原則全額自己負担となったが、低所得者対策は当然必要で、世帯の所得段階に応じて食費の一部を市町村が負担する制度ができた。後に、この負担金の財源が介護保険料だということを知った時の気持ちは、もう忘れたい。備忘録に書くまでもない。保険給付ではないものの財源は変わらず、理論の大切さを学んだ貴重な体験だった。建前と言いたい気持ちを抑えて大人の階段を上ったつもりでいたが、我慢できずに書いてしまった。
今回の改定で、介護老人保健施設は在宅復帰機能を一層求められるようになった。長期入所を希望される利用者の利用目的とのギャップに葛藤は続く。利用者やご家族の負担増、減収のリスクなど、異論も多いが老健本来の役割を果たせるよう在宅復帰率の向上に全職員で取り組んでいる。理由は割愛するが、この取り組みはケアの質の向上に必ずつながると信じている。在宅復帰に伴うベッド回転率の上昇は利用者の入退所が多くなることを意味し、特に看護職・介護職への負担が大きい。
また、介護職員処遇改善交付金が廃止され、介護職員処遇改善加算が創設された。加算では利用者の自己負担が発生する。柴田施設長から常に言われているように、私たちの生活は利用者に支えられて成り立っていると再認識させられる改定だった。同交付金の創設に当たっては、平成20年6月に迫田理事長が宮崎県団長を務めた「介護職員の生活を守る緊急全国集会」に、全国から約3,000人の老健職員が集まり、介護職員の処遇の現状を訴えた。集会に参加した当施設職員は、処遇改善で介護職員のやる気が増し、ケアの質の向上につながるのではないかと報告した。交付金制度の創設から3年が経過し、職員の処遇は、ケアの質はどうなっただろうか。10年後はどうなっているだろうか。極めて私的なタイムカプセルになってしまったが、3回目のエコーリレーで振り返ろうと思う。忘れずにいたい。 |