昼食前の11時40分に訓練を行う事で、もともと摂取量が少なく、むせ込みのある N 氏にどのような変化があったかチェックを行う。
【経 過】
口腔体操を始める前にSTに評価をしてもらうため、ご本人に会ってもらった時の事であったが、 N 氏は初めて会う人にそれも口の状態を見せるという事に強い拒否反応を示された。その理由として、まず聴覚的理解力 ( 複雑な内容の理解力 ) の低下があるということをご本人もわかっているため、ご家族 ( 妻 ) をとても頼りにされているところがあった。「家内はこの事を知っているのか?」と言われ、どの利用者に関してもまず本人とご家族を交えて、現在の状況や今後の取り組みについて話し合い、共通認識を持ったうえで目標設定や訓練内容を確認していくことは当然の事だと痛感した。
それを踏まえ、まずはご自宅を訪問し、本人・ご家族・スタッフの3人で話す事から始めた。それからは思った以上にスムーズに話は進み、2回目は口腔体操の内容を説明と実際にご家族にもやっていただき、3回目にはこの研究での発表も了承していただいた。
やっとスタートしたものの、まずはどう観察・表現していくかで悩んだ。口腔体操を実施・評価していくうえで、どれだけの効果があったのかという表現が数字で表せるものではなく評価しにくいことが挙げられ、また評価するスタッフの客観的な評価がもとになるため、スタッフが利用度に変わってしまうと評価自体が違ってくることが考えられた。
そこで、STのアドバイスも得ながら当通所独自のチェック表を作成し実施していった。また、口腔体操を実施する上でご本人の性格を考慮し、実施していくなかでの変化をみるために担当スタッフを決め、実施前後にはリラクゼーション ( 首〜肩にかけてゆっくりと触れる ) を取り入れ施行していった。途中 ST のアドバイスのもと、鏡を使用して本人自らやっていただく自主訓練もした。実施していくうえで拒否は全くなく、勤勉な性格の方なので懸命に取り組まれた。(現在進行中のため、後日追加報告を行うこととする。)
【今後に向けて】
以前から口腔リハビリの重要性を感じながらも、通所スタッフによる取り組みが困難な状況があった。今回の事例を通して、 ST 不在のなかでもアドバイスを受けながら通所スタッフで実施していくことで多くのことを学ぶ事ができた。こういったニーズが増えてきているため、今後は通所活動のなかのひとつとして、個別的・小グループでの取り組みを提供していくことが必要だと考える。